ストレスでお腹を壊す(下痢する)とよく言われており、ストレス→胃腸というイメージが強いですが、
漢方では、一番ストレスに関係する臓器は胃腸でなく「肝」といわれています。

「肝」は気の流れをぐるぐる回している臓器と考えられており、ストレスなどで気の流れが滞ると、自律神経がおかしくなります。

「肝」の自律神経がおかしい状態が胃腸に伝わると、肝脾不和(かんぴふわ)と呼ばれる下痢しやすい状態になります。

西洋医学的に考えると、「ストレスで肝臓の胆汁関係が乱れて消化が悪くなり油もので下痢しやすくなる」という説明が近いと思っていました。

しかし、これだと炭水化物を分解する唾液が入ってなくて「油もので下痢する」に近く、「ストレスで何を食べても下痢する」の説明に少し遠ざかっているような印象も…。

そんな中、腸の情報は肝臓経由で脳に伝わっている(DOI:10.1038/s41586-020-2425-3)という論文があるのを知りました。

肝臓が腸管環境情報を集積・統合して脳へと伝達し、脳から腸にフィードバックしているそうです。

つまり、腸内環境は肝臓が現場監督をしているという、中医学の肝→胃腸のつながりに似ているような話に近い印象を受けました。

論文では、肝臓が良いと腸内の炎症が減る、肝臓が悪いと腸内の炎症が増えるみたいな感じでしたが。

腸内環境は単純に下痢だけでなく、アレルギー体質などの炎症反応や情緒にも関係してきます。

腸内環境をよくするには、胃腸だけでなく肝臓を強くすることが重要であるともっと研究がすすんでいくと良いですね。

ストレスで下痢しやすい場合、漢方的には、単純に下痢止めや整腸剤だけでなく、「肝」の気の巡りをよくする生薬が入ったものを用います。

ストレスで胃が痛い場合は、安中散を使うことも多いです。安中散にも「肝」の気の巡りをよくする生薬が入っています。

また、例えばニキビやアトピーのような炎症性疾患も、「抗炎症」⇔「腸内環境」⇔「肝」のつながりを考えると早く良くなります。

中医学的には、五臓は関係性があると言われているのが科学的に解明されていくと面白いですね。

「胃腸」トラブルの責任は「肝」にもあるという感じなので、「肝」強くする観点から治していくと良い結果につながることもあると思います。

余談ですが、「肝」がパワハラしすぎて「胃腸」が弱るパターンもあるので、そういう時は「肝」を鎮める方法も漢方的にはあります。

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