» 漢方コラムのブログ記事

漢方では、肺に水がたまると咳がでると言われています。
2000年前の人が言うことなので、実際にレントゲンで水が映る胸水や肺水腫といった症状のこととは少し異なります。
胸水や肺水腫の時は、その時に飲むような漢方があります。

咳の時の肺に水が溜まるとは、肺まわりがむくんでいるような水の流れが悪い状態です。
この時は、肺に溜まった余分な水分が痰として出てきたり、痰をだそうと咳が出たりします。

なんぞ出にくい痰が絡んだり、空咳のような状態が長く続く時も、やはり肺の水の流れが悪いです。
麦門冬湯飲んだけど効いたような効かなかったようなという時は、水の流れを改善すると驚くほど咳がピタっと止まります。

水の流れを改善するには、水を吸収する胃腸(脾胃)、水を空気と一緒に体に散布する肺、いらない水を尿として出す腎の三つの臓器を同時に治していくと効果的です。

肺・脾・腎をバランスよく治して、水の流れを改善し、肺に水が溜まっている状態を解消すると、長年お困りの咳が楽になります。

ストレスでお腹を壊す(下痢する)とよく言われており、ストレス→胃腸というイメージが強いですが、
漢方では、一番ストレスに関係する臓器は胃腸でなく「肝」といわれています。

「肝」は気の流れをぐるぐる回している臓器と考えられており、ストレスなどで気の流れが滞ると、自律神経がおかしくなります。

「肝」の自律神経がおかしい状態が胃腸に伝わると、肝脾不和(かんぴふわ)と呼ばれる下痢しやすい状態になります。

西洋医学的に考えると、「ストレスで肝臓の胆汁関係が乱れて消化が悪くなり油もので下痢しやすくなる」という説明が近いと思っていました。

しかし、これだと炭水化物を分解する唾液が入ってなくて「油もので下痢する」に近く、「ストレスで何を食べても下痢する」の説明に少し遠ざかっているような印象も…。

そんな中、腸の情報は肝臓経由で脳に伝わっている(DOI:10.1038/s41586-020-2425-3)という論文があるのを知りました。

肝臓が腸管環境情報を集積・統合して脳へと伝達し、脳から腸にフィードバックしているそうです。

つまり、腸内環境は肝臓が現場監督をしているという、中医学の肝→胃腸のつながりに似ているような話に近い印象を受けました。

論文では、肝臓が良いと腸内の炎症が減る、肝臓が悪いと腸内の炎症が増えるみたいな感じでしたが。

腸内環境は単純に下痢だけでなく、アレルギー体質などの炎症反応や情緒にも関係してきます。

腸内環境をよくするには、胃腸だけでなく肝臓を強くすることが重要であるともっと研究がすすんでいくと良いですね。

ストレスで下痢しやすい場合、漢方的には、単純に下痢止めや整腸剤だけでなく、「肝」の気の巡りをよくする生薬が入ったものを用います。

ストレスで胃が痛い場合は、安中散を使うことも多いです。安中散にも「肝」の気の巡りをよくする生薬が入っています。

また、例えばニキビやアトピーのような炎症性疾患も、「抗炎症」⇔「腸内環境」⇔「肝」のつながりを考えると早く良くなります。

中医学的には、五臓は関係性があると言われているのが科学的に解明されていくと面白いですね。

「胃腸」トラブルの責任は「肝」にもあるという感じなので、「肝」強くする観点から治していくと良い結果につながることもあると思います。

余談ですが、「肝」がパワハラしすぎて「胃腸」が弱るパターンもあるので、そういう時は「肝」を鎮める方法も漢方的にはあります。

のぼせ、ほてり、イライラなど更年期障害のような症状が、
40歳よりずっと若いのに出る。
もしくはとっくの昔に閉経したのに出る。
「更年期って年齢でもないのに更年期障害になるんでしょうか?」
という相談がよくあります。

実際にストレスやホルモンバランスの乱れで更年期障害と同じ症状が年齢に関係なく出ていることは多いです。
「更年期障害に似たようなものですね」と店頭で説明していますが、もっといい言葉がありました。
それが「血の道症(ちのみちしょう)」です。

「血の道症」とは思春期から老年期まで広い年齢にみられる症状。
主症状は、のぼせ、動悸、気分が悪い、気がめいる、怒りやすい、つかえる感じ、圧迫感、うつ、ヒステリーなどの神経症、頭痛、めまい、動悸、おなかのハリ、げっぷ、吐き気、全身のほてり、しびれ、頭重、耳鳴り、震え、ひきつけ、けいれん、不眠など。
単独で起きたり、複合で起きたりしますが、血流関連(瘀血)の症状が最も多いとされています。
血流の悪さで起きる症状もありますが、胃腸症状、水毒、ストレスなど原因はさまざまで、症状も更年期症状と同じです。

もっというと更年期障害が、血の道症の一つであり、
更年期障害(40-55歳ぐらい)が血の道症(思春期~老年期)に含まれている感じです。

なので、「更年期って年齢でもないのに更年期障害になるんでしょうか?」というのは、なってるといえばなっているし、正確にいうと「血の道症」で更年期障害と同じ症状がでている状態です。

三大婦人方といわれる当帰芍薬散、加味逍遙散、桂枝茯苓丸を使われることも多いですが、その他にも、「血の道症」を改善する方法や漢方は多数あります。

風邪に葛根湯で有名な葛根湯。
飲んでも効かなかったという方も多く見受けられます。
なぜ葛根湯が効かなかったのか?

一つは、葛根湯の証でなかった可能性。
のどの痛みには葛根湯はあまり効きません。
のどの痛みは銀翹散を使います。
「私、風邪はののどからくるのよ」という人は葛根湯が効きにくいと思います。
また、汗がないときは葛根湯ですが、汗がじわじわ出ている時は桂枝湯の方がよく効きます。

もう一つは葛根湯の証だったが、葛根湯を飲んだのに治らなかった可能性。
なぜかというと葛根湯が風邪を治すわけではないから、葛根湯を飲んだだけでは治らないことがあるのです。
葛根湯は発汗療法のうちの一つで、うまく発汗させないとカゼは治りません。

葛根湯を飲んで、発汗させればカゼが治り、葛根湯よく効いたなーとなります。
うまく発汗させるためには、
①おかゆやうどんを食べて、薬力を助ける。
②厚着したり、暖房をかけたり、毛布にくるまったり温かくする。
③汗が出ないときは~~する。
④一服で汗が出たら服用を止める。汗がでなければでるまで飲む。
 身体から汗がでて、下着を3回変えるぐらいが良いらしいです。(緒説あり)

というわけで、なぜ葛根湯が効かなかったのかは、そもそも薬が違うか発汗をしてカゼを治すことをしていなかったのではないかという可能性があります。
ほかにも体力・免疫力の落ち込みやストレスなど体調悪いとカゼが治りにくい場合もあるので、この限りではありません。

(参考文献:漢方治療44の鉄則 坂東正三)

お正月に飲むお屠蘇ですが、初めて飲んだ時は「まずい!お金払ってまずいお酒に!」とビックリしました。
そもそもお屠蘇は生薬でできていますから何か代わりになるものがないか調べてみました。

手持ちのお屠蘇の構成は、
桂皮、山椒:冷えをとって腎を補う
茴香、陳皮、丁字:胃腸を温めて元気にする
桔梗、浜防風:肺に良い

なんとなく長寿を願う補腎薬と胃腸薬と風邪予防といった中身になっています。
代わりになりそうなのは、晶三仙、亀鹿仙、百潤露あたりでしょうか。
自分は味が苦手だったので、今年はこの3つを飲んでみようと思います。

1年間の邪を払う縁起物ですが、この邪の指すところは昔はリスクが高かった肺炎や風邪、お正月のごちそうやお酒の湿邪あたりだったのかもしれませんね。
胃腸薬や補陽薬、風邪予防あたりを何か飲んでおくと、寒い冬を元気に過ごせそうです。